名古屋工業大学ハラスメント防止ガイドライン

平成17年 9月 7日制  定
平成22年12月 8日一部改正
平成23年 3月29日一部改正
2021年 1月 8日一部改正
2023年 7月28日一部改正


1.なぜハラスメント防止ガイドラインが必要か
2.このガイドラインは誰を対象とするのか
3.セクシュアル・ハラスメント
4.アカデミック・ハラスメント
5.パワー・ハラスメント
6.妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
7.その他のハラスメント
8.ハラスメントにあった場合は
9.問題解決の手段-手続きについて-
10.ハラスメント防止のための施策

1. なぜハラスメント防止ガイドラインが必要か
 基本的人権尊重の精神に則り,本学において学び,研究し,働くすべての者が個人として尊重され,セクシュアル・ハラスメント,アカデミック・ハラスメント,パワー・ハラスメント,妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントなどのあらゆるハラスメントによる人権侵害のない快適な環境を作ることを目的にハラスメント防止ガイドラインを定め,構成員の道しるべとしてここに示します。

2. このガイドラインは誰を対象とするのか
 このガイドラインは本学の構成員である教職員(常勤・非常勤を問わず,以下「職員」という。),学生(留学生をはじめ,科目等履修生,聴講生も含めた学生全般),研究員等(雇用関係にない研究員,派遣職員,業者など本学の業務に従事する者全般),を対象とします。職員は離職後も,学生は卒業・退学後も,研究員等は本学との関係がなくなった後においても,在職中,在学中もしくは研究・業務従事中に受けた被害に関してそれを相談することができます。また,問題が起こった時間や場所は問われることなく,ハラスメントが本学構成員と学外者との間において発生又は問題となった場合など本学に関係するところすべてにおいて適用されます。

3. セクシュアル・ハラスメント
 1)セクシュアル・ハラスメントとは
  セクシュアル・ハラスメントとは,行為者本人が意図すると否とに関わらず,相手方の意に反する性的言動で相手方に不快感や不利益を与えたり,職場環境を害したりするものです。また,性に関する固定観念や差別意識に基づく言動もセクシュアル・ハラスメントとなります。
  このハラスメントでは行為者と被害者の性の区別はなく,同性間でも成り立ちます。さらに,行為者と被害者の立場の差に関係なく,学生から職員に対しても成り立つ問題です。
 2)セクシュアル・ハラスメントを起こさないために
  本学構成員は男女が対等なパートナーであることを認識し,常に相手の人格を尊重するとともに,相手の立場に立って考え行動することが必要です。相手を性的な対象と見て,力関係を利用して支配したり,圧迫したり,心身に傷害を負わせたりすることがあってはなりません。
  たとえ行為者本人が良かれと思って行うことであっても,相手によっては,それが我慢できないセクシュアル・ハラスメントだと受け止められることもあります。
  この問題は,特に社会的,文化的,宗教的な背景の差異に起因することも多く,行為者にとって「常識的行為」であっても,個人の尊厳を傷つける場合があるので注意が必要です。

4. アカデミック・ハラスメント
 1)アカデミック・ハラスメントとは
  アカデミック・ハラスメントとは「教育,研究の場における権力を利用した嫌がらせ」であり,以下のようなものがあります。
  ①研究活動に関するもの(研究疎外型と研究搾取型)
  ②教育活動に関するもの
  ③暴力的言動に関するもの
  これらにより,相手に身体的,精神的な苦痛,傷害を与えることがアカデミック・ハラスメントです。
  例えば,研究活動に関する嫌がらせには,研究テーマを与えない,機器を使わせないなどの研究活動を妨害する行為(研究疎外型)や,研究成果やアイデアを無断流用する行為(研究搾取型)などがあげられます。
  教育活動に関する嫌がらせには,正当な理由なく指導を行わないこと,学位や単位認定に対して不公正な態度をとることや,進路に関する妨害や干渉のほか,指導の名目で無理な課題を与えたり,大勢の前で成果等を否定するなどがあげられます。
  これらの行為は加害者による嫌がらせの意図の有無に関わらず,受け手が嫌がらせと感じると,アカデミック・ハラスメントになる場合もあるので注意が必要です。
 2)アカデミック・ハラスメントを起こさないために
  教員,上司や上級生として,指導する立場にある人は,いつでもアカデミック・ハラスメントを起こしうることを認識し,教育・指導を受ける側の人がその行為をどう受け止めているのかを常に注意して観察する必要があります。
  アカデミック・ハラスメントは研究する権利,あるいは教育を受ける権利を侵す人権侵害行為であることを認識し,本学構成員は良好な学習・研究・就業環境を守る努力をしなければなりません。

5. パワー・ハラスメント
 1)パワー・ハラスメントとは
  職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって,②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより,③労働者の就業環境が害されるものであり,①~③までの要素を全て満たすものをいいます。「職場」とは,事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し,通常就業している場所以外であっても,業務を遂行する場所については,「職場」に含まれ,「労働者」とは,正規雇用労働者だけではなく,パートタイム労働者,派遣社員,雇用学生等,雇用されている全ての者が含まれます。
  客観的にみて,業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しませんが,代表的な言動の類型と類型ごとに典型的にパワーハラスメントに該当する例(優越的な関係を背景として行われたものであることが前提)としては以下のようなものがあります。
  ①身体的な攻撃(暴行・傷害)
   ・殴打,足蹴りを行う。
   ・相手に物を投げつける。
  ②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
   ・人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱 的な言動を含む。
   ・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
   ・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う。
   ・相手の能力を否定し,罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する。
  ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
   ・自身の意に沿わない労働者に対して,仕事を外し,長期間にわたり,別室に隔離したり,自宅研修させたりする。
   ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし,職場で孤立させる。
  ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
   ・長期間にわたる,肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる。
   ・新卒採用者に対し,必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し,達成できなかったことに対し厳しく叱責する。
   ・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
  ⑤ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
   ・管理職である労働者を退職させるため,誰でも遂行可能な業務を行わせる。
   ・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
  ⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
   ・労働者を職場外でも継続的に監視したり,私物の写真撮影をしたりする。
   ・労働者の性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報について,当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。
 2)パワー・ハラスメントを起こさないために
  指導的あるいは管理的立場にある者は,自己の言動がいつでもパワー・ハラスメントとなりうることを認識し,部下がどう受け止めているのかを常に注意する必要があります。パワー・ハラスメントが重大な人権侵害行為であることを認識し,本学の指導的・管理的立場にある者は,すべての人の人権が尊重される職場環境を守る安全配慮義務を負っているのです。

6. 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
 1)妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは
 「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと,育児休業介護休業等の利用に関する言動)により,妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業・介護休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることをいいます。
 2)妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを起こさないために
  妊娠・出産等についての知識や制度について理解することが必要です。自分の価値観を押し付けないようにし,特定の人に向けた言動でなくても,妊娠・出産や法律で認められた権利である育児休業・介護休業制度の利用について否定的な発言をすることは,ハラスメントの発生の原因や背景になり得ますので,注意する必要があります。また,妊娠中または育児をしながら働いている人は,周囲との円滑なコミュニケーションを心がけ,自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つことも必要です。

7. その他のハラスメント
 その他に,飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為,人権侵害を指すアルコール・ハラスメント,「男らしい」「男のくせに」「女らしい」「女のくせに」など,固定的な性差概念にもとづいた差別や嫌がらせを行うジェンダー・ハラスメント,言葉や態度,身振りや文書などによって,人格や尊厳を傷つけたり,肉体的,精神的に傷を負わせて,研究室や職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり,雰囲気を悪くさせるモラル・ハラスメントなどがあります。

8. ハラスメントにあった場合は
 1)相手方の言動により,あなたが「不快だ」「不利益を受けている」と感じたら,相手に対して言葉と態度ではっきりとそのことを伝えてください。相手の立場に関係なく勇気を持って拒否し,自分の意思をはっきりと相手に伝えることが大切です。相手に「ノー」と言えない場合でも,あなたが悪いわけではないので,自分を責めることなく,そして一人で悩むのではなく,すぐに誰かに相談するか,または学内のハラスメント相談員に相談してください。大学外に置かれた外部相談員に相談することもできます。
 2)ハラスメントにあったら,「いつ・どこで・誰から・どのようなことをされ,または言われたか」などについて記録を取っておくようにしてください。誰か証人になってくれる人がいる時には,その人にあとで証言してもらうことの確認をとっておくとなおよいでしょう。
 3)もし,自分の周囲でハラスメントを受けている人がいたら,勇気を持って助けてあげましょう。加害者に注意したり,被害者の証人になったり,相談にのってあげたりしてください。また,ハラスメント相談員のところへ相談に行くように勧め,同行してあげてください。

9. 問題解決の手段 -手続きについて-
 1)苦情相談窓口
  ハラスメントへの対応のために,学内には次の相談窓口が設置されています。
  ○ハラスメント相談員
  ○学生なんでも相談室
  ○保健センター
 2)苦情相談への対応
  相手方との間での問題を解決するための方法としては,相手方への注意・警告,当事者間での話し合い(調停),強制的な措置をとること(苦情申し立て)があります。どの方法によるかは,ハラスメント相談員と話し合った上で被害にあった本人が決めることになります。
相談対応は,総括相談員が指名した複数のハラスメント相談員が,相談者のプライバシーを守って相談にあたります。重大なものについては,その都度速やかにハラスメント防止委員会(以下「防止委員会」という。)に報告し,問題解決のための措置を講じます。
 3)苦情相談に関する調査
  防止委員会は,相談員会議からの報告により,ハラスメント苦情相談に関する調停または調査をするために,必要に応じてハラスメント調査委員会(以下「調査委員会」という。)を設置します。調査委員会は,2か月以内に調査結果を報告します。
  調査委員会からの報告でハラスメントと判断され,本学懲戒処分の指針に該当する場合は,防止委員会は,速やかに学長に報告します。
 4)懲戒処分
  学長は,役員会の議を経て,処分を行います。役員会は懲戒処分の量定を決定し,学長は,懲戒処分書を交付することで処分を行います。
 5)再発防止
  再発防止のために,必要な場合には,学長は,次のような措置を講じます。
  ①当該教員の授業停止
  ②指導教員の交替
  ③必修単位の代替措置
  ④職場等の環境改善命令 など
 6)構成員が注意すべき事項
  ①苦情相談者等
    ハラスメントの苦情相談及び苦情相談に関する事情聴取等に際して,虚偽の申し立てや証言をした者は,処分されます。
  ②相談を受けた者
    ハラスメントに関して相談を受けた者が,相談者に対してハラスメントや,その他の不利益な扱いをしてはなりません。
  ③申し立てられた者等
    ハラスメントに関して,申し立てられた側が報復をしてはなりません。もし,報復行為がなされた場合には,大学としてただちに必要な措置を講じます。
   また,申し立てられた者以外の者が,申し立てをした者に,何らかの差別的・不利益的な取扱いや,嫌がらせなどをしたときも同様に対処します。

10. ハラスメント防止のための施策
  防止委員会は,ハラスメントの防止及び排除のために,次のような啓発活動を行います。
  ①リーフレット・ポスターの作成
  ②管理的地位にある職員に対する研修
  ③大学構成員の意識向上のための講習会の実施
  ④ハラスメント相談員の研修